文系DXスタジオ AMUのDXスタートアッププランは「業者に丸投げして、結局誰も使わなくなるシステム」を作るものではありません。 優秀なAI(Gemini)や使い慣れたWord、スマホで動くLINEを使い、 「自社で情報発信をコントロールする力」を身につけていただく伴走型インハウス支援モデルです。
印刷会社の皆様、日常の営業活動の中で、こんな経験はありませんか?
「葬儀社さんのパンフレットを作っているけれど、クライアントから『葬儀のプラン料金は複雑で、チラシに載せても結局、家族が納得して選んでくれない』とぼやかれる」
葬儀業界にとって、最大の課題は「不明瞭さ」です。人生の最期に関わる大切な場面であるにもかかわらず、多くの家族はパニック状態で、費用の相場もわからず、どのオプションが必要かも判断できないまま、高額な見積もりに不安を抱えています。
この「情報の非対称性」こそが、葬儀社のDXにおける最大のフロンティアでした。今回は、私たちがどのようにしてこの課題を「シミュレーター」という仕組みで解決したのか、その開発の裏側を紐解きます。
「パンフレットを刷る」から「選ぶ体験を創る」へ
きっかけは、ある老舗葬儀社の経営者との雑談でした。「チラシを配っても、結局電話で相談を受けてからじゃないと見積もりが出せない。家族も不安そうだし、我々も電話対応で疲弊してしまう」という悩みです。
そこで私たちは提案しました。「チラシで宣伝するのをやめて、チラシから『見積もりシミュレーター』に誘導しませんか?」
パンフレットという「静的な情報」を、顧客の入力に合わせて回答が変わる「動的なシステム」に変える。これこそが、印刷会社が持つべき「DX的視点」です。
開発のハードルは、驚くほど低かった
「システム開発なんて、何百万円もかかるのでは?」 そう思われるかもしれませんが、答えは「いいえ」です。私たちは今回、以下の身近なツールを組み合わせるだけで、プロトタイプ(試作品)を完成させました。
Google フォーム: 家族が「参列者の数」「祭壇のグレード」「お料理の種類」などを選択するための入り口。
Google スプレッドシート: 入力されたデータを集計し、プランごとの金額を自動計算する「頭脳」。
GAS(Google Apps Script): 集計結果をもとに、見やすい見積書PDFを自動生成し、相談予約メールを自動送信する「自動化エンジン」。
特別なプログラミング言語は一切不要です。 既存の事務作業で使うようなツールを、少しだけ「自動化」という文脈で繋ぎ変えただけなのです。
「見える化」がもたらした驚きの結果
このシミュレーターを導入した葬儀社では、劇的な変化が起きました。
信頼の獲得: 家族は、納得いくまで納得するまで自分のペースでシミュレーションできます。「これなら予算内で収まる」という安心感を得てから問い合わせをするため、葬儀社側も成約までのリードタイムが短縮されました。
営業の自動化: これまで電話で1時間かけて説明していた内容が、Web上で完結するようになりました。営業担当者は「詳細な見積もりの説明」という事務的な作業から解放され、「家族の心に寄り添うケア」に集中できるようになったのです。
印刷物の価値向上: シミュレーターへの誘導として、QRコード付きの小さなチラシやカードを配布するようになりました。印刷物は「詳細情報を載せる媒体」から「シミュレーターという便利なツールへの案内役」へと役割を変え、捨てられる確率が激減しました。
「わからない」を「わかる」に変えるのが印刷屋の仕事
印刷会社には、長年培った「情報を整理する力」があります。葬儀のプラン表を、誰にとっても直感的なフローチャートや図解に落とし込む力。それをデジタル上に再現するだけで、立派なDXサービスが完成します。
重要なのは、「完璧なシステムを作ろうとしないこと」です。
まずはGoogleフォームで項目を作り、スプレッドシートで計算式を組んでみる。最初は不格好でも、実際に現場で使ってもらいながら、「もっとこの項目が必要だ」「この説明文が分かりにくい」というフィードバックをもらって改善していく。この「共創プロセス」そのものが、顧客との絆を深めます。
次回予告:マッチングは印刷屋の得意領域?
葬儀シミュレーターという「可視化のDX」によって、印刷会社は単なる「紙の納品業者」から、クライアントの「事業パートナー」へと立ち位置を変えることができました。
では、この成功を他の業種に応用するにはどうすればいいのでしょうか。 次回は、印刷会社が広告制作で培ってきた「情報整理力」と「地域ネットワーク」を活かした、全く新しいビジネスモデル「地域限定ランチマッチングメディア」の構想についてお話しします。
「自分たちの地域で、どんな『出会い』をプロデュースできるか?」 一緒にワクワクしながら考えていきましょう。
【今回のポイント】
顧客の「不安(不明瞭さ)」こそが、最も価値の高いビジネスチャンス。
Googleフォームとスプレッドシートがあれば、高価なシステム開発なしで「診断・シミュレーション」ツールは作れる。
印刷物を「シミュレーターへの入り口」に変えることで、その価値を再定義できる。
次回、「『マッチング』は印刷屋の得意領域?」へ続きます。